【感想文】筒井康隆『薬菜飯店』
書評風の感想文です。かなり未熟ですが、ご容赦ください。
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1992/08
- メディア: 文庫
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筒井康隆による全七編からなる短篇集。
以下ネタバレとなりますので注意してお読み下さい。
- 薬菜飯店
表題作。エッセイ風の語り口から始まりとある中華料理店で主人公がスカトロの極致を味わう様子を描いている。いわゆるデトックスが流行るのも、こういう快感を求めてのことなんだろう。爷爷と青娘のストレートな言動が心地良い。
- 法子と雲界
「夢」のもつ力を操る法子とその弟子たちの逸話を集めた全9話のショート・ショート集。これの前に『パプリカ』を読んでいたのでそれのプロトタイプっぽいなと思った。夢には現実に対する虚構という側面があり、筒井康隆には他に『虚人たち』や『文学部唯野教授』など虚構をテーマにした作品が多いが、ごく短い文章の中でもそのエッセンスが伺われる。
- イチゴの日
AKBで実写化したらおもしろいんじゃないかな。
- 秒読み
ジュブナイルSF。ではないが、壮年のくたびれた口調から少年の初々しい口調までの変化が鮮やかで、どうにもならない閉塞感の中に一筋の希望が見えるよう。
- ヨッパ谷への降下
この短篇集では出色。「乳白色の朝靄」の中で紡がれる「もうひとつの論理」がなんとも言えず素晴らしい。
- 偽魔王
ヤクザと悪魔の中編スプラッタ。復讐譚のようだが、よくわからない結末を迎える。
- カラダ記念日
俵万智の『サラダ記念日』 のパロディ。二作続けてヤクザだが、なんなんだろう。解説で俵万智が書いてるのを読んで、社会現象だったんだなあと思った。内容はかなり上手く執拗にパロっていて、さすがである。
全体を通して、あんまりまとまりを感じなかった。薄味な気がする。(樹下)