読トリン活動日誌

京大読トリンの例会活動内容を記録します。

5/18 例会

モンスター (幻冬舎文庫)

モンスター (幻冬舎文庫)

主人公は醜い顔で小学校のころからいじめられていたが、整形手術により素晴らしい美貌を手に入れる。その後小学校のころから思い続けていた男性に会い、その美貌の虜にするが、彼が好きになっているのは整形した顔の自分であって、整形する前の自分も含めて好きになっていないのではないかというジレンマに苦しむ。(しのぶ)

白い人・黄色い人 (新潮文庫)

白い人・黄色い人 (新潮文庫)

遠藤周作芥川賞を受賞した作品。白い人でも黄色い人でも一貫して描かれているのはキリスト教の否定である。白い人に至っては「神を信じて死ぬことなど所詮は個人のヒロイズムを満たすものでしかない」とさえ発言している。キリスト教徒である作者があえてキリスト教を否定するという意味でとても革新的な小説であった。(ぐうすか)

例会 4/13

家族八景 (新潮文庫)

家族八景 (新潮文庫)

筒井康隆七瀬シリーズの最初の一冊である。他人の心を読める七瀬が様々な家に家事手伝いとして潜入し、その家庭の奥底に沈んだ本音をぶちまけさせていく話である。
本音をぶちまけた後の家族の壊れ方は比較的おもしろおかしく書かれているが、冷静になるとかなりゾッとする。特に心理学教授の家に住み込みをした時は壊れ方からラストまでの駆け抜け方が最高であった。(ぐうすか)

連合艦隊の最後―太平洋海戦史 (光人社NF文庫)

連合艦隊の最後―太平洋海戦史 (光人社NF文庫)

海軍に従事した後取材活動を始めたというめずらしい経歴の作者による小説。太平洋戦争のはじまりからおわりまでが描かれている。大和・武蔵・信濃の沈没するシーンなどを事実に忠実に描いており、読み物としても単純に面白い。また、作者による分析や批評も盛り込まれており、読みごたえがある。(しのぶ)

4/6 例会

対岸の彼女 (文春文庫)

対岸の彼女 (文春文庫)

主人公は小さい子供を持つ母親である。子供を産んでひと段落したあと、大学のころの同級生に会う。明朗快活に見える同級生の過去と、主人公の過去を整理したあと、現在の主人公と同級生を描いていく。
人間誰しもが持っている「外れた部分」の描き方、そして作品を通して流れる空気がよかった。(しのぶ)

リビジョン (ハヤカワ文庫JA)

リビジョン (ハヤカワ文庫JA)

三部作のうちの一つ。整理できないほど細かい情報が出てきながらも最後にはきれいにまとまっていく。まるで砂浜から持ってきた二つの貝殻がぴったりと合わさるようである。
話は次の三巻につながっていくが、三巻でも作者の技巧はそのままたのしめる。時間を忘れて楽しめる作品だった。(ぐうすか)

3/30 例会

先週は関係ない話をしたせいで本を紹介できませんでした。

運命の人(一) (文春文庫)

運命の人(一) (文春文庫)

山崎豊子のいsカウ。西山事件を題材としている。戦前から続く大新聞である毎日新聞を一時期倒産の危機にまで追い込んだ西山事件とそれをめぐる国家の黒い部分を描いた作品。(しのぶ)

World 4u_ 1 (ジャンプコミックス)

World 4u_ 1 (ジャンプコミックス)

ジャンプにしては珍しい異色の作品。テーマは都市伝説で、簡単に言えば都市伝説のコミカライズ化。しかしよくある話ながら一つ一つの話の内容が濃く、楽しんで読める。いわゆる王道の少年漫画ではないが、まるで一つの小説を読んでいるような気分になり、とても楽しめた。(ぐうすか)

例会 3/17

職業としての学問 (岩波文庫)

職業としての学問 (岩波文庫)

学問を職業としている人の現状を三つに分けて分析している。まずその一つ目はドイツ型・アメリカ型という分類、二つ目は心構え、三つめは学問の意義。
これから入学してくる新入生にとって「職業」というものを考えることがあると思う。その時に役に立つと思うので、ぜひ読んでもらいたいと思った。(しのぶ)
私を知らないで (集英社文庫)

私を知らないで (集英社文庫)

おばあちゃんと二人暮らしでお金がないはずなのに、高価なバッグなどをいつもつけている変わった子がいる。いかがわしい噂が流れる中、転校生である主人公は彼女に興味を持つ。思春期の主人公の感情を巧みに描いた、みずみずしい小説。(しのぶ)
おとうと (新潮文庫)

おとうと (新潮文庫)

幸田文の作品。前半では意地の悪い人間たちに囲まれながら生きるやんちゃな弟の姿を、後半では良心的な人に囲まれた弱っていく弟の姿を、姉の視点から描いている。この対称的な弟の姿の表現は鮮やかであり、目に浮かんでくるようである。古典にしては中学受験の問題文として出題されることもあるような文章であるので、気軽に読める。(ぐうすか)

2/16  例会@ルネ

水源―The Fountainhead

水源―The Fountainhead

翻訳としては読みやすい。物語はハワード・ロークが大学を退学するところから始まる。そのハワードが、周囲の迫害からめげずに自分のやりたい建築を突き詰めていく小説。現代建築にこだわるハワードと古代建築にこだわる教授の対立構造から、昔の人の遺産のおこぼれにあずかるセカンドハンド(中古)人間と主人公の目指す、他人に依存しない完全超人を通して「いい」意味での自己中心主義を伝える。(アロゲ)

アフリカの爆弾 (講談社英語文庫)

アフリカの爆弾 (講談社英語文庫)

複数の短編から成る筒井康隆の短編集。そのどれもがコメディを交えながら、最終的には近代批判に収まっていくという筒井康隆の得意な形式となっている。男尊女卑について男性と女性の権利の平等が進んでいたこの時代にあえていきすぎた女尊男卑を批判し、しかもそれが現代にそのまま通じる形になっていることはさすが名作家だと思った。(ぐうすか)

2/9 例会

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)

トリックも大筋のストーリーも凝っていた。さらに文章力もあって描写がわかりやすい。どこかで名前を聞いたから読んでみた、程度の動機だったが、やはり有名な小説は有名な理由があるのだなと実感した。(ぐうすか)

PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA)

PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA)

サイコパスのチェ・グソンに焦点を当てたスピンオフ。本編ではあまり触れられなかったキャラに焦点を当てている。在日韓国人という立場から描いた独特の世界観が面白く、印象に残った。(しのぶ)

老ヴォールの惑星

老ヴォールの惑星

4つの短編集。ギャルナフカの迷宮という短編が印象に残った。だがいずれも濃度が高い。人間に焦点を当てた小川一水らしいSF。極限状態の人間がどうやって危機を乗り越えていくかというテーマで、SFにしては人間臭いシナリオがよかった。(アロゲ)

クズの本懐(1) (ビッグガンガンコミックス)

クズの本懐(1) (ビッグガンガンコミックス)

主人公二人の擬似的な恋人関係を描いた物語。しかし、三巻からの先生の豹変ぶりによって二人の人間関係が崩れていく。ドロドロになった人間関係で主人公の豹変ぶりもまた面白い。(アロゲ)